2010年5月19日水曜日

第1次産業支援にかかわる政策提言

第1次産業支援にかかわる政策提言(兵庫県版)

農林漁業をかけがえのない
基幹産業として位置づけて

2010年5月19日
日本共産党兵庫県委員会
兵庫国政委員長 堀内照文

日本共産党は、第1次産業を、食料の確保はもちろん、環境保全や豊かな教育にとっても必要な、国民にとってかけがえのない基幹産業であると位置づけ、それにふさわしい政策を求めています。それは日本共産党綱領にも明記しています。
これまで、「農業再生プラン」をはじめ、燃油高騰時の漁業への直接補償や、林業支援策など、その時々の課題に対する政策提案を行い、2009年夏の総選挙では、それらをまとめた政策(マニフェスト)を発表し、その実現のために奮闘していますが、それら全国的な政策に、兵庫県の特色も反映させた「第1次産業支援にかかわる政策提言(兵庫県版)」をあわせ、政治の責任を果たすために力を尽くすと共に、生産者と消費者の一層の共同・社会的連帯を呼びかけます。

農 業

価格保障と所得補償の組み合わせで30キログラム1万円を

「コシヒカリ30キログラムが一昨年は6900円、去年は6000円。生産コストは上がっているのにこれでは農業は続けられない」。農業では暮らしていけず、そのために担い手が減っています。兵庫県はこれまで、4割もの生産調整(減反)を実施してきており、農業の衰退に拍車をかけてきました。
民主党政権は、「日米FTA締結」を推し進めるとしています。もしこれが進められたら、米作は82%減少(日米経済協議会「日米EPA 効果と課題」より)し、大打撃を受けます。
「米の戸別所得補償モデル事業」も、労働費の補償は80%とされ、労働者の最低賃金にも及びません。しかも補償単価が全国一律で、生産コストの高い兵庫では一層不十分なものになります。「水田利活用自給率向上事業」も大幅ダウンになるケースがあり、「これはダメだ」の声が広がっています。
そもそも農業予算は自公政権時に大幅削減されているのに、民主党政権はこれをさらに削減しました。2000年度予算と2010年度予算を比較すると約1兆円少なくなっています。これでは農業再生は絵に描いたモチです。今こそ国の基幹産業として位置づけ、ふさわしい予算に抜本的に増額するべきです。
「農業で暮らしていけるように、安心して農業を継がせられるように、農政を変えて欲しい」という農家の願いは切実です。日本共産党は、2008年3月に、
・価格保障と所得補償制度を組み合わせ、抜本的に充実させる
・「関税など国境措置を維持・強化し、『食料主権』を保障する貿易ルールを追求する
------などを主な柱とした「食糧自給率の向上を真剣にめざし、安心して農業にはげめる農政への転換を(日本共産党の農業再生プラン)」を発表しました。さらに、この「農業再生プラン」を踏まえ、4月26日には「低すぎる所得補償では展望が開けない 価格保障と所得補償の充実、輸入自由化ストップで、農業の再生を」と題する政策も発表したところです。
兵庫県は中山間地が多いなど、経費が東日本に比べて割高になる実態があります。例えば「第58次兵庫県農林水産統計年報」では、2008年産米1俵60キログラムあたりの生産費は、全国平均が9610円に対して、近畿平均は12390円と、約3千円高くなっています。従って、提案の主旨に照らし、兵庫では当面、価格保障と所得補償および中山間地農業への支援制度を充実させることで、1袋(30キログラム)1万円を実現させます。また、県内では有機栽培をはじめ様々な努力と工夫で、多くのブランド米が好評を得ています。そうした農家の努力・工夫を反映する柔軟な対応も行います。

都市近郊農業を都市づくりの重要な柱として位置づけ、生産緑地指定拡大、税金面での負担軽減措置を進めます

日本共産党は、5月7日に「住民の暮らしに欠かせない都市農業を発展させるために------日本共産党の都市農業振興政策」を発表しました。兵庫県内でも、神戸市北区や西区、明石市などをはじめ、都市近郊農業が発展する条件が無数にあります。県民・市民からも「地産・地消」を望み、農地を守って欲しいとの声が寄せられています。
しかし、開発優先政策のもとで、貴重な農地が都市計画の線引きで潰され、さらに宅地並みにされた市街化区域農地への課税が、農業を続けたいと願う農家への深刻な障害となっています。
都市の農地と農業の維持・発展を、兵庫の都市づくりの重要な柱として位置づけ、従来の都市計画を転換し、農地や里山の役割を十分に評価し取り入れた都市政策へ、農地・農業の位置づけを明確にする「都市農業振興法(仮称)」制定へむけた取り組みを具体化させます。当面、地方自治体が積極的に生産緑地に参加・指定拡大を行うよう、生産緑地指定によって減少する税収分については国から交付税措置を行うなど、法改正をはじめとする必要な対策を進めます。さらに、抜本的な農地税制改正を追究します。

「暫定法」を現状にあった内容に改正します

兵庫県は2004年の台風21号、23号、2009年の台風9号とわずか5年間で3つの台風災害にあいました。この中で、とりわけ2009年台風9号による被災で、農業災害に対する補償を定める「農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(以下、「暫定法」と略す)」の欠点が露呈しました。
家屋や農業施設の復旧費用が捻出できず、離農を余儀なくされたり、そのために共同施設の復旧・維持が困難になるなど、災害により地域や農業が一層疲弊することがあってはなりません。
「暫定法」は、2次災害防止の観点から早急な復旧事業を行うためとして、農地などの災害復旧事業申請を、被災から60日以内で国に提出することとしていますが、期日を過ぎた場合の取り扱いは規定がなく、「一切受け付けられない」と事実上切り捨てています。
しかし、佐用町では20人もの犠牲者と2千件を超える被害が出ています。未だに行方不明になっている方がお2人おられます。町職員も町民も、人命救助と生活再建を最優先に奔走しました。そんな中わずか60日間で町内すべての農地の被害状況を調査・報告し、復旧計画をたて、「災害復旧事業(補助)計画概要書」を国へ提出するなどは、とうてい無理です。しかも国と県が強引におしつけた自治体合併で自治体職員は地理に不案内な上、「行財政改革」による人員削減による弊害が顕著です。
災害の経験を汲み、[1]災害復旧事業計画概要書の追加受付を認める、[2]獣害防止柵等、現在補償対象とされていない農業施設を補助対象とする、の2点を「暫定法」に盛り込む改正を早急に実現させます。

食の安全、農業の安心を守る抜本的対策を積極的に行います

2009年の神河町産米から流通基準以上のカドミウムが検出されました。検査を実施しながら、結果をみずに給食米として子どもたちに食べさせた県教育委員会および県学校給食総合センターの責任は重大です。
神河町では、「湛水栽培」などに取り組み、農協もあらためて検査で安全であることを確認していますが、一方でこの問題は、一970年初頭に発覚した鉱害問題で、国・県・原因企業が十分な対策を講じなかったことに根本的原因があります。
生野イタイイタイ病問題が発覚した当時、時の自民党政権は「イタイイタイ病」とカドミウムの因果関係を認めようとしませんでした。さらに「生野にイタイイタイ病はなかったし、今後も発生しない」として、客土など抜本的対策は極めて限定した範囲に留めました。
「湛水栽培」は事前の溝きりや水管理など労力がかかるうえ、収穫量も減少しかねないなど、農家に多大な負担がかかる農法です。また、農協は追加検査を実施し、消費者に安心を保証していますが、その経費も負担になっています。
もともと企業と国に責任があることです。食の安全を確保するために、
[1]必要な検査費用は、国が負担する
[2]「湛水栽培」にかかる労賃を含む経費、珪カル投入などの経費も国・県・企業が負担する
[3]客土など抜本対策を順次実施する
[4]基準値を含め規制の見直しを図る
------など、ルールづくりと対策を実施します。

畜産・酪農支援について

「最近、競市の活気がなくなってきた」「価格が下がり、経営がジリ貧だ」など、繁殖農家からも肥育農家からも不安の声が寄せられています。但馬牛を守るために、後継者育成対策、予算確保に力を尽くします。増産を可能にするために不可欠な、人件費、施設設備への支援を強めます。また、県は、優秀な牛を育てるために種牛を農家から買い入れていますが、買い入れ頭数が減らされているうえ、県が県試験所から買い入れるといったことも行われています。県の買い付けは農家を激励し、共同して良い牛を育てる効果があります。県買い入れ頭数を増やすなど、行政の一層の支援を可能にします。
長年の乳価据え置き、飼料の高騰などによる経営難は、県内酪農家も深刻です。卸売乳価を、酪農家の生活と経営を支えられる額に引き上げます。
今の酪農は、飼育方法が基本的にアメリカ型だといわれています。また、脂肪分などの基準が設定され、基準がクリアできなければ「罰金」が課せられますが、特に夏場などは輸入飼料でなければその基準はクリアできないのが実情です。消費者ニーズに応えつつ、酪農家にも牛にも負担をかけなくて済むような飼育方法やしくみ、製品などの研究を進めます。
ヘルパー育成と安心してヘルパーを活用できるよう、補助制度拡充を進めます。

漁 業

最近また燃油が値上がりしています。また、資材等の値段は高止まりする一方、産地魚価は低迷を続け、「少しでも不漁が続けば倒産という綱渡り状態」「漁業を続けたら赤字が増える、やめたくても借金があるからやめられない」など、漁業と漁師、地域の存続が深刻な事態になっています。
2008年の燃油高騰対策は、基準価格を燃油が一定高騰した時期の価格を設定し、値上がりしだした当初時期を対象にしていないため、「使えなかった」「対策とはいえない」という代物でした。
日本海側で盛んなイカ漁は、比較的遠くまで漁に出て行き、さらに光源が必要なため、とりわけ燃油高騰は大打撃です。
瀬戸内海側では、海苔の色落ちや海洋環境の変化による不漁、さらに明石海峡3船舶衝突沈没事故で“トリプルパンチ”にみまわれ、その傷は未だに癒えないどころか、事故補償が事実上ないために、経営難は広がっています。
日本共産党はこれまでに、7割が公共事業という突出した公共事業偏重の水産予算を改めて、
・投機マネーの実効ある規制を行う
・政府の責任で燃油価格を安定させ、異常値上がりについては直接補てんする
・大スーパーの横暴な買いたたきを抑え、漁業者や産地卸の声が届く公正な取引
・国内生産を圧迫する無秩序な輸入の規制などで漁民の労賃を正当に評価する魚価の実現
・安全対策の強化
------などを実現させることを提案しています。
兵庫においては、この政策提案を前提に、以下の内容を実現させるために力を尽くします。

漁業を続け、安心して暮らせるために

[1]漁船、海苔の精製に必要な設備等の購入、修理、更新(近代化や省エネ化など)の費用に対する補助制度を拡充し、恒久的制度として確立します。
[2]「省燃油操業実証事業」の基準を2007年7月以前の単価を参考にしたものに改め(A重油=75円/リットル、軽油=80円/リットル)、制度を継続すると共に、手続きの簡素化を図ります。
[3]台風や津波などで被災した経営体への支援を拡充します。
[4]船主責任制限法によって漁業被害への補償が不足した場合に備えて、公的補償制度を早急に創設します。
[5]漁業権および県条例の遵守、水産資源の保護・育成を、市民・県民の共同で取り組みます。

安全確保のために

[1]特定航路内における大型船の航行に対して、「見張りの徹底」「整列・低速航行」などを徹底すると共に、漁繁期には監視体制や航行規制などを強めます。
[2]波間にあっても位置を知らせる高竿旗の取り付けなどをプレジャーボートにも義務付けます。

日本海暫定水域問題解決に力を尽くします

日本海には、竹島問題も関わって未だに「暫定水域」が設けられており、「安心して漁ができない。早く解決して欲しい」との声が寄せられています。
日本共産党は、竹島(独島)が日本領土である歴史的根拠があると主張しています。しかし、それだけで片付けられない問題が残されています。
日本が竹島を領土編入した1905年、日本が朝鮮半島の植民地化をすすめ、韓国は事実上外交権を奪われていおり、異議を唱えることができませんでした。「竹島問題」は韓国にとって日本の侵略戦争・植民地支配の象徴となっており、日本政府の歴史認識が正されることが求められています。
日本共産党は唯一、侵略戦争に反対を貫いた党として、道理をもって外交を進め、2006年には韓国側と率直な意見交換も行いました。かつて北方領土問題でも、「領土問題は解決済み」とする旧ソ連政府に対して、「全千島が日本固有の領土」と交渉し、「話し合いに応じる」と回答させた実績もあります。漁業問題など、両国民の利害に直接かかわる問題では、共存・共栄の精神で漁労と資源保護などを進めつつ、暫定水域問題の根本解決にむけ、力を尽くします。

林 業

兵庫県は中国山脈をはじめ、豊かな森林をもつ県です。西播磨、北播磨、丹波、但馬などで積極的に林業に取り組まれ、また、神戸六甲山や淡路では、防災対策や漁業振興(魚付保安林)などと一体に森林育成・保護が進められてきました。
しかし、人工林の蓄積が増加する一方で、採算性の低下や森林所有者の高齢化、過疎化などの影響に例外ではありません。そんな中、兵庫県は、2004年の台風21号、23号、2009年の台風9号で倒木による甚大な被害がありました。今、森林保全は文字通り焦眉の課題となっています。
日本共産党は、
・林業労働者の確保と林業技術の継承をはかり、地域に即した流通・加工体制を確立し、林業・木材産業の再建を図る
・木材の生産、水源の涵養、国土保全、生物多様性保全など森林の多面的な機能を発揮させるため、市町村への財政措置を拡充し、森林組合など林業事業体への支援を強める
・作業道の整備、間伐の自己負担の軽減など、小規模所有者もふくめた森林整備をすすめる条件を広げる
・国産材の需要拡大を図るため、公共事業での国産材・木製品の利用の数値目標設定、新たな木材加工・利用技術の研究開発の促進、融資や税制上の優遇措置を拡大し、地元材の使用住宅を広げる
・木質バイオマスや森林レクリエーションの推進など山村地域での新たな事業を促進する
・国有林を健全に育成し多面的な機能を発揮させるため、事業の分割・民営化を撤回し、現業部門を重視し持続的な経営管理に取り組む
------などの政策を提案しています。
また、日本共産党兵庫県委員会も、2004年の台風被害も教訓にした「森林保護・林業振興のために(第1次政策)」を発表しましたが、その後の情勢を踏まえ、追加提案(第2次政策)を行うものです。

倒木対策を進めます

2004年台風による風倒木処理について国は5年、県は3年と期限を切りましたが、現場の「とても3年で処理できるものではない」「現場の状況に応じて柔軟に対応して欲しい」との声は当然です。
台風災害など広範囲におよぶ倒木被害については、衛星写真の利用、専門家や現場の意見をふまえ、被害状況の正確な把握と無理のない作業計画とし、少なくとも人工林における対策は最後まで行います。

地籍調査の徹底

森林をめぐる様々な問題・課題が起こった時に重要なのが地籍です。宍粟市(旧一宮町)で森林対策が比較的進んでいるのも、地籍調査をやり切っていることが教訓的です。
現在、地籍調査が進められていますが、一部では取り組みに消極さもみられます。今後の森林対策に大きく寄与する地籍調査を地元自治体が安心して取り組み、しかも調査が早期に終了するよう、必要な支援を強めます。

林道・作業道の整備を進めます

現在、林内路網密度は1ヘクタールあたり40メートルが適切とされています。兵庫県の人工林面積は約22万1600ヘクタールで、目標とするべき林内路網は、約8860キロメートルです。兵庫県の計画では、2013年度までに18.1メートル/ヘクタールを整備するとしていますが、これを倍にひきあげられるよう、国による支援を抜本的に強めます。
なお、林道についても表面流水の増加や土壌剥離の一因になることは免れません。樹種や土壌の特性にあった適切な敷設が求められます。必要な調査や技術向上のための補助も行います。

森林の育成を進めます

「植林をしても鹿や猪に食い荒らされる」「手をかけられない」などの悩みも深刻です。
森林組合の事業や国・県の支援で計画的に植林、森林の保全を行います。
皆伐・列状間伐は極力避け、適切な間伐が行えるよう、必要な支援を強めます。また、倒木処理も含めて、やむを得ず山林内に留め置く場合などの安全確保について、マニュアルの作成・更新と徹底をはかります。
大企業などの温暖化ガス排出量を確保するための森林買いあさりは規制し、森林育成・活用政策に協力するルールをつくります。

木材活用を促進します

県内では、「学校の机や椅子を県産木材で作る取り組みを進めたい」「専門家のアドバイスを受けながら自分で木を選んで使う『裏山からの家づくり事業』に取り組んでいる」「バイオマスストーブのような事業をやってみたい」など意欲的な活動がいくつも生まれています。こうした取り組みを応援する政治を進めます。

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今、兵庫県内でも、農林漁業の各分野で様々な努力、取り組みが行われています。同時に、生産者と消費者の連携、農家と漁師、林業と農業の共同なども広がりつつあります。
日本共産党は、こうした社会的連帯を積極的に進め、第1次産業の再生と振興のために、現場のみなさんと共に考え、共に汗をかき、共にやりぬく政治を実現します。